実践事例集:「ショートステイ」利用者居室の環境改善の報告
北新宿特別養護老人ホームかしわ苑 サービス向上委員会 平成20.8.1
H19年度サービス向上委員会では、ショートステイ居室の環境改善を行ってきました。環境改善においては、日本社会事業大学・児玉桂子氏らが作成した「日本版認知症高齢者ケアにおける環境指針」を用いて、実際の福祉現場の実践でその効果を実証してきた「施設環境づくり実践プログラム」の手順を参考にしながら、それに準じた形で進めていく事としました。
今回の実施にあたっては、特に情報源が関連図書や実践報告資料のみであり、実施していく事自体が手探りである上、実際に各セクションの職員が集って業務時間内に改善の為の委員会等を新たに設置するのが難しいこと等も考慮して、サービス向上委員会の今年度のの1つとして、改善する対象範囲をショートステイ利用居室に限定した形で施工していく事にしました。
ただ本来ならばショートステイ居室限定という形式ではなく、施設内全部を対象とした環境改善が目的で作られたプログラムであり、実施に際しては各セクションの協力のもとプロジェクトチームを立ち上げて業務に組み込む形(専門の検討委員会を設置する等)で計画・立案・実行していくべきプログラムであることを補足しておきます。
では実際にどのような経過でプログラムが進んだのかを報告いたします。
<1>手順と方法について
まず、「施設環境づくり実践プログラム」の実施にあたってのステップとしては次の6段階の手順が示されています。サービス向上委員会では、基本的な手順にそって改善を進めていく事にしました。
- ステップ1:認知ケアと環境への理解を深める。
- 「痴呆性高齢者への環境支援のための指針」を活用して学習する。
- ステップ2:環境課題を抽出する。
- キャプション評価法で、施設環境の問題点等を抽出する。
- ステップ3:環境づくり計画を立案する。
- キーワードを決めて、取り組みたい環境課題を絞っていく。
- ステップ4:環境づくり計画を実施する。
- 実際に環境づくりに仕様する物等を購入する等して、取り組みやすいところから始める。
- ステップ5:環境を使いこなす。
- 環境づくりの成果を入居者のケアプラン、生活プランに生かしていく。一度行った環境づくりは、季節ごとの変化や入居者の状態に合わせて見直されて、維持されていく事が重要。
- ステップ6:環境づくりの効果を確かめる。
- 環境づくりによる施設環境自体の改善状況、スタッフの環境を生かしたケアへの取り組み、入居者の生活への影響を、実施前と実施後に評価を行い、客観的にその効果を検証する。
キャプション評価法とは
キャプション評価法とは、主に都市開発の分野で用いられてきた環境評価の手法です。
施設環境の評価に用いるにあたって大切なことは、施設職員をはじめとする評価者が、自分とは異なる様々な立場からの環境に対する見方や考え方を知り、施設環境のもつ多面性を理解し、それを踏まえた環境づくりへの課題の共有化を図っていくことです。
今回用いた手法(キャプション評価法)は、評価者がカメラを持って施設内を歩きまわって、自分がいいな・いやだな、何か気になるなと感じた箇所を撮影して、その箇所について・誰にとって(対象)、・何の(要素)、・どんなところが(対象)、・どう感じられたか(印象)について、評価者が自由に記入して、写真とともに1枚のカードにまとめるといったものです。