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実践事例集:認知症ケアと施設環境づくり

認知症ケアと施設環境づくり-番外編

国際学会に参加して

ケア文化の変革の実践

学会が開催された米国南部の中心都市アトランタ
学会が開催された米国南部の中心都市アトランタ

ちょうどこの連載がスタートした5月に米国アトランタ市で開催された、国際環境デザイン学会に参加して、施設環境づくりの取り組みについて発表を行ってきました。とくにアメリカにおける高齢者環境の動向とこの施設環境づくりへの評価について報告したいと思います。

高齢者環境とケアのカルチャー・チェンジ

第37回国際環境デザイン学会には、アメリカを中心として、日本や韓国などアジアや世界各国から500人が参加して、高齢者や子どもと環境、健康と環境、ホームレスと都市環境、自然とエコロジーなど幅広いテーマが取り上げられました。今回の大きな特徴は、これまでマイナーな地位にあった高齢者の居住環境がプログラムの前面に位置づけられ、高齢者環境の新しい動向を表現するキーワードとして「カルチャー・チェンジ(ケア文化の変革)」が強調されたことです。今回の学会では、カルチャー・チェンジを、①旧世代からベビーブーム世代の文化へと変える、②病院モデルから家庭的モデルへとケア環境の文化を変える、という2つの意味で使われました。

ベビーブーム世代の文化へと変える

この会議ではアメリカの高齢者を、①GI世代:第二次世界大戦の体験世代であり、我慢や国への忠誠心が強く、スケジュール化した秩序立ったライフスタイルを好む、②沈黙の世代:平和部隊などの影響を持つが人数的にも少数派、③ベビーブーム世代:スポック博士の自由な育児法やベトナム反戦運動の影響を受け、多様性や個人の嗜好・選択を重視する膨大な人数の世代といった3世代に分けて、旧世代からベビーブーム世代のライフスタイルへと高齢者住宅・ナーシングホームのケアや環境の変革を急務としています。アメリカ建築家協会のメンバーとケアの専門家により新しいケア文化の視点から、既存の高齢者住宅やナーシングホームの検証が行われるなど、ベビーブーム世代のライフスタイルにふさわしい高齢者住宅やナーシングホームへと変革の動きが、産学両分野で活発化していることが感じられました。

世界に誇れるスタッフの質

米国のナーシングホームは、日本以上に大規模で、地域から隔離された医療的色彩の強いものが多くみられます。これに対してパイオニア・ネットワークなど高齢者自身によるケアの文化を根本から変革する動きが起こり、高齢者が心理的・精神的に快適に暮らし、かつ必要なケアを受けられるケア環境の実現へと研究や実践を巻き込んだ運動が行われています。

ウイシコンシン大学ワイズマン教授(右)と筆者(左)
ウイシコンシン大学ワイズマン教授(右)と筆者(左)

私たちの研究グループではこのシルバー新報の連載テーマである「認知症高齢者への環境づくり」について、昨年度から2回にわたって発表を行っています。認知症ケア環境の第一人者のウイシコンシン大学ワイズマン教授は、この取り組みが、体系的なプログラムに沿ってケアスタッフの手により進められ、ケアスタッフのケアへの意識や環境を大きく変え、それが入居者の生活にプラスをもたらす点から、まさにケア環境の文化を変革する実践として高く評価をしています。なぜ、日本のケアスタッフがこれほど高度な取り組みができるのかと言う会場からの質問には、日本通であるワイズマン教授自身が、日本のケアスタッフの教育レベルの高さや熱心さについて説明を加えてくれました。今回紹介した各施設の環境づくりは、世界的にみても他に類のないケアスタッフ自身による、ケア文化の変革の実践であることに自信を持って、これからも現場の方々と取り組んでいきたいと思います。

日本社会事業大学教授・児玉桂子
シルバー新報 2006年(平成18年)8月11日

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