環境づくりページトップ

実践事例集:認知症ケアと施設環境づくり

認知症ケアと施設環境づくり-実践に学ぶ⑬

介護職の洞察力を実感

環境づくりを振り返って

これまで、12回にわたって、環境づくりの連載をしてきました。最終回となる今回は、「環境づくりを振り返って」ということで、環境づくりの評価について触れた後で、今後への課題、まとめを述べます。

6つの施設と大学が共同で取り組んだ「施設環境づくりプロジェクト」でしたが、施設の規模や元々の物理的特徴、あるいは職員体制などによって、同じ期間同じように取り組んでも、様々な進め方、成果、あるいは課題が見えてきました。

これらの取り組みについて誰がどのように評価するかについては、入居者や家族などの反応、あるいは職員の達成感の度合いなどから、ある程度主観的に自己評価することが可能です。現場で感じるこれらの直感は、たいてい当たっていると言えますが、一方で客観的に見てこの取り組みがどうだったのか、ということも必ず問われます。

こうした点について今回のプロジェクトでは、施設ごとに考えた評価方法のほかに、全施設共通で、介護職員を対象に「多面的施設環境満足度評価法」を用いた評価を行いました。プロジェクト実施前後で同じ調査を行うことで、「環境」に対する満足度や期待度がどのように変化したのかを測定するものです。図は、A施設における満足度、不満度の変化を11の観点から表したものです。これをみると、A施設では満足率はさほど増加しませんでしたが、不満足率が大幅に減少したことがわかります。ここから、今回のA施設の環境づくりは、満足向上というよりは不満解消型であったといえます。

こうした結果は、客観的な指標が得られるだけでなく、今後の環境づくりの方向性や活動方針を定めるために有効な情報になります。また、今回のように複数施設で実施した場合は、共通項目を通して施設ごとの特徴や成果を比較することもできます。このように、環境づくりの取り組みを行う際には、ぜひ、何らかの客観的な指標をとっておくことをお勧めします。

次に、プロジェクトを通して見えてきた課題です。今回のプロジェクトは、当初8カ月の予定で計画されていましたが、11カ月かかりました。結果として、より濃い内容の取り組みができたといえますが、施設によっては若干負担となってしまったかもしれません。今後は、施設の状況に合わせ、期間や内容を調節するテーラードプログラムを提供することが必要だと考えています。また、今回は大学周辺の地域で行ったため、大学側のスタッフが積極的に施設に通い、様々な調整を行うことができましたが、遠隔地で取り組む場合には、このような密な関わりはできません。このため、現場主導で行うことができる、より簡便なプログラムも用意する必要があると考えています。また、先に述べた評価という点では、入居者自身の評価をどのように把握するかについて、その手法の開発も含めた検討も行う予定です。

最後に感想を交えたまとめです。約1年間を通して行われた環境づくりの活動を通して、「現場の力」を改めて強く感じました。特に、日々入居者に接している介護職員の「環境」への視点や洞察力は大変細やかでかつ鋭く、私たち大学側の人間も学ぶことがとても多かったです。最前線の現場は忙しく、いわゆる3大介護に追われてしまうことも多いのが現実かもしれませんが、環境づくりの取り組みを通して、それぞれの施設や職員が目指すケアへの思いや理念、考え方を改めて共有するよいきっかけになったように思いました。環境づくりは、施設のケアそのもの現場から変えていく力を持っていると実感した1年でした。この場をお借りして、関係施設の皆様に心からの感謝と敬意を表します。
みなさんの施設でも、できることからぜひ取り組んでみませんか?(終わり)

日本社会事業大学  影山優子
シルバー新報 2006年(平成18年)8月4日

実践事例集:認知症ケアと施設環境づくり|6施設の環境づくり現場レポート|HOME|環境づくりのツール

環境づくり.com 目次

☓閉じる

この目次パネルはキーボードの[F1]キーでも開閉できます。