環境づくりページトップ

実践事例集:認知症ケアと施設環境づくり

認知症ケアと施設環境づくり-実践に学ぶ⑪

デザイン専門家の視点も

現場レポート8

プロジェクトに参加し、一緒に環境づくりを実践するなかで、ケアスタッフが気付いた利用者ニーズを聞き、ケアの質や生活環境の改善目標を確かめながら、環境デザイン専門家の立場から物理的条件の把握と評価を補足し、実施の方策を伝え、情報の提供と計画へのアドバイスを行なった。

既存施設でケアスタッフが環境計画するには、制約の多い物理的条件を把握する知識や実施の手法が不足していると分かり、環境づくりの実施案を決めるうえで、環境デザインに関わる者が連携して果たすべき役割の大きさを実感した。それと同時に、設計者が施設の使用実態をもっと知る必要があると思った。

物理的環境の計画を、施工条件・実施内容・費用などを考慮した難易度により、①すぐできること、②多少の工事が伴うが比較的簡単にできること、③別業種の関与が必要なこと、の3つの段階に分けて取組んだ。

こうした難易度評価の段階からデザインの専門家と一緒に検討すれば、実現できそうにないと諦めていたことが実現できたり、別のやり方で工夫できたり、思い掛けない発見やアイデアを得ることができる。

目に見える環境の変化は取組む意欲を後押ししてくれるので、家具配置換えや掲示物の工夫、照明の光色の変更など、できることから積極的に実行したい。

新しい施設と異なり、在来型の既存施設の環境づくりで配慮すべき計画のポイントがあった。

1 場所の使い回し

個別性の高い「生活モデル」への転換を目指したり、経年変化による利用者の身体状況に合わせて施設を住みこなすには、施設内の場所や部屋の使い方を見直したい。日当たりの良い場所、静かな場所などの特性を把握して、その場所に相応しい使い方を割り振るように心掛けたい。

2 既存備品の使い回し

既存施設には、性能、サイズ、かたちの違い、色違いも含めると既に多くの備品が揃っているので、既存家具を用いて場所づくりのアイデアを実際に試すことから始められる。

3 スケール感について

入居者が暮らしてきた住宅と比べて、在来型施設の空間サイズはとても大きい。大きすぎる場所は心理的な違和感を与えるだけでなく、入居者が身に付けてきた生活動作を自然に行なうのを難しくする。対象となる場所の広さを把握するには、畳が何枚敷けるかを考え、自分の部屋と比べてみると分かりやすい。身体に馴染みやすい大きさに家具配置で場所を区分して、住宅スケールの場所を提供したい。

4 備品の質感について

入居者世代の文化や生活習慣などを考えた和風に限らず、柔らかい自然素材や豊かな質感に包まれた暖かみのある居場所が求められている。

5 場所に守られること

人やものの動きから外れて滞留できる小さく囲い込まれた場所など、落着いて過ごせる居場所づくりを心掛けたい。入居者が安心して暮らすには、人から守られるだけでなく、場所からも守られる必要があるからだ。

高齢者の住まいをつくる会 http://www.kourei-sumai.com/では、現場で役立ててもらうための、環境デザインツールとして、「ケアユニットのデザインツールCD-ROM」を制作している。参考にしてもらえれば幸いだ。

一級建築士・沼田恭子
シルバー新報 2006年(平成18年)7月21日

実践事例集:認知症ケアと施設環境づくり|6施設の環境づくり現場レポート|HOME|環境づくりのツール

環境づくり.com 目次

☓閉じる

この目次パネルはキーボードの[F1]キーでも開閉できます。