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実践事例集:認知症ケアと施設環境づくり

認知症ケアと施設環境づくり-実践に学ぶ⑧

「流れ作業的」介助脱却へ

現場レポート5

東京都清瀬市にある特別養護老人ホーム清雅苑は、1996年に開設され、今年で10年の節目を迎えました。

入所定員は82名で、2階が一般棟、3階は認知症のフロアです。一直線の廊下の両方に居室が振り分けられている当時としては一般的な設計です。キャプション評価では290枚の写真が集まり、単純に上位3カ所の環境づくりをすることにしましたが、最終的には2階3カ所、3階1カ所になっています。

U字型テーブル
以前あったU字型テーブルを撤去

その中で2、3階共通であげたのが食堂です。食堂は、中央の固定カウンターによって空間が2分割され、「介助テーブル」と呼ばれる食事介助用のU字型のテーブルが使われており、介助者が立ったまま食事介助を行っていました。U字型テーブルの撤去です。 職員が2~3人中に入って、立って食事介助をしていました。キャプション評価でも「鳥に餌をあげているようでおかしい」などの意見も出されていました。職員にアンケートをしたところ、この人にあげたら次の人というような流れ作業的な介助に疑問を感じることもわかりました。

U字テーブルによる食事介助は利用者の顔が上を向いてしまい誤嚥の危険性がある、介助者も座ってご利用者の目線で食事介助するのが常識ではないか、などの問題点が以前より指摘されていました。撤去の案もことあるごとに出ていましたが、職員の人数不足、利用者の重度化、座って介助するのはなんとなく気が引ける、といった理由で次第とうやむやになってしまい、撤去には至りませんでした。一人ひとりの職員の中に気持ちがあっても、なかなか踏み出せないでいたのを「環境づくりプロジェクト」として現場に任せてもらえたことで踏み込むことができたのだと思います。

談話室1
談話室を設置

2階では、食べ終わったらすぐに下げ膳していたため、12時半には食堂も片付いて利用者も食堂にはいないような状況でした。利用者のペースに合わせたかたちに変えることも、目標設定にしていました。12時半でもまだ食堂には利用者がたくさん残っている状況です。職員の気持ちが変わったことでのんびりとした雰囲気をつくっていけるようになったようです。

この1年間の実践だけでも、ちょっとした工夫で利用者の方々がやすらげる、ご家族様に訪問しやすいといわれるような環境をつくりだしていけることを実感しました。

3階でも同様にカウンターを撤去し、U字テーブルを外し、テーブルのみとしました。プロジェクトの関連で、職員がインテリアゼミに参加した際に、高齢者は、同系色の色が識別しにくいということを学びました。3階は床が薄いピンクで、テーブルも周りのカーテンもピンクです。全体にぼやけて見えにくいのではないかということで、2階の緑色のいすとテーブルを入れ替えています。ピンクには緑が対照的な色であることをアドバイスいただき、手すりに緑色のテープをまいているところもあります。ご家族とご本人の談話スペースができただけでなく、空いたスペースをレクリエーションに使用したり、畳を敷いてご利用者に横になっていただくなど、予想もしていなかったアイデアも生まれました。

談話室2

設計士からは、照明や色のアドバイスの他、図面に実寸から切り抜いた車イス、机など家具を配置してイメージ作りを手法なども学びました。電子メールを主に連絡方法としたことで外部や現場の中での情報共有もスムーズに行きました。

従来型施設は構造上、どうすることもできない部分も確かにあります。しかし、職員も諦めているわけではなく、どうにかしたいという気持ちを抱いているもの。その思いが形になったのが今回のプロジェクトだったと思います。

外部との関りや運営側の理解、職員のやる気(加えて多少の予算も!)さえあれば、構造的にハンディを負う施設でも、たくさんできることはあるのではないでしょうか。

清雅苑  横山 亮太
シルバー新報 2006年(平成18年)6月30日

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