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実践事例集:認知症ケアと施設環境づくり

認知症ケアと施設環境づくり-実践に学ぶ⑥

畳のある「くつろげる場」を

現場レポート3

当園は、196床が4フロアに分かれています。1フロア50 名前後の大規模な施設です。施設環境づくりに出会い、2005年度は手始めに2フロアで取り組むことになりました。ここでは「重度の認知症の利用者」を対象としたフロアについてお伝えします。昨年4月からPEAPの学習を始め、数回のミーティングで職員の動機付けやアイディアの検討を進めました。その過程で今まで、利用者の安全や身体介助などを優先した介護だったことに気づきました。

閑散としたティールーム
畳コーナーでごろり
もとはがらんとしたティールーム。(上)
畳コーナーは小グループの活動に効果を発揮している(下)

一番は、日中の過ごし方です。キャプション評価では、食堂のスペースにベッドが置かれ、臥床スペースになっていたことが特に問題としてあがりました。重度の認知症の利用者を非常に広いスペースで介護しているこのフロアでは、見守りができるように、居室と食堂を結ぶ廊下の扉を閉めていました。そのため、利用者は日中、食堂周辺で過ごすこととなり、横になりたい方には、見守りを重視するばかりに食堂脇にベッドを設置していました。評価を契機として、日中に扉をあける時間を設けるようにしました。これにより、食堂で寝ていた方がお部屋で休むようになり、食堂のベッドを撤去することができました。巡回など業務の内容を見直し、心配していた事故や利用者間のトラブルも今のところ起きていません。

食堂の脇には広いスペースもありますが、机がおいてあるだけでほとんど使われていませんでした。キャプション評価では家族の方から「ただ広いだけで使っていない」「机だけ置いてあって、もったいない」などの意見もありました。食堂にしか利用者の居場所がないことへの反省から施設環境づくりの目標を「くつろげる場所」と明らかにしました。

「くつろげる場所」を具体化するために数多くの意見を交換してイメージを膨らませました。共通して浮かんだのは、施設ではいすの生活がほとんどであるので、靴を脱いで過ごすことが出来る場所が欲しい、畳スペースを作ろうということでした。幸いにもは床の素材が柔らかく、床暖房もあります。しかし、くつろぐにはある程度の「狭さ」が必要であろうと、4畳半程度とし、畳の周りにはソファーを置くこととしました。畳とアルミサッシが接する辺を収納ボックスで囲うことで、サッシの寒々しさが隠れ、収納の他にも背もたれや立ち上がる時に手を掛ける場所としても役立つことが分かりました。畳は備品としてホームにあったもので、バザー品やいただいたソファーを使って極力費用は抑えています。デイルームの死角になる場所には、ソファーを置いて家族が面会のときに利用できるようにもしました。

この畳スペースは書道や手作業をしたり、茶話会を開いたりといった具合に小グループでの活動に大きな効果を発揮しています。意外に正座をしてすごせる方が多いというのも大きな発見でした。いつも食事の後には必ずここにきて横になってくつろいでいる方もいます。ソファーを置いたことで、畳に座れない方でもこの場所でくつろぐことができます。利用者同士のかかわりも増え、顔なじみも増えているような気がします。

自分からここで過ごす方を増やしていくためには、さらに改善が必要ですが、いずれにせよ、個別ケアの視点が職員に伝播したことも大きな収穫の1つです。

親愛の園施設介護課 介護第1係 小野貴志
シルバー新報 2006年(平成18年)6月16日

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