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実践事例集:認知症ケアと施設環境づくり

認知症ケアと施設環境づくり-実践に学ぶ⑤

入居者の目線で考えて

現場レポート2

特別養護老人ホームマザアス東久留米は、2004年4月から15~16名を1ユニットとし、6つに分かれ、ユニットケアを行っています。ユニットケアといっても、建物や設備が殆ど従来型のままで、集団ケアを前提とした環境の中で行ってきました。

施設環境作り共同実践研究プロジェクト」に参加するにあたっては、職員全員が共通の認識を持って取り組んでいこうと、研修会を開き、個々のユニットに持ち帰っても進行状況は足並みをそろえて行ってきました。自分の所属のユニットについて取り組んできたので、発想もしやすく思い入れも強くなりました。

その反面、シフト業務がメーンにあり、サイドワークとしてこの環境改善の取り組みに時間を割かなくてはならないので、ユニット内であっても皆で作業する時間を合わせることが難しさがありました。

2階・桜ケ丘では、夜勤帯を除いて食事・入浴・排泄などを全てユニットで 完結し、ケアを行っています。Aさんは桜ヶ丘二丁目に所属されています。

桜ヶ丘2丁目の目標は、「リビングを、入居者と職員にとって安心できて心地良く、衛生的な環境にしよう」というものです。

「安心できて心地良く」という目標ですが、これは、Aさんの行動がきっかけになっています。

Aさんは、午後になると落ち着きがなくなり、立ち上がることが多い方でした。また、独りで歩くと転倒の危険があり、事故防止策としていすから立ち上がると警告音が鳴るセンサーを使用しています。そのため、センサーの音が鳴り響く事が続きました。

Aさんが落ち着かなくなる時間帯が排泄介助の時間に重なるといった事情があり、職員はずっと側にいることは出来ません。頻繁に鳴るセンサーの警告音につられてか、周りの方も落ち着かなくなることがありました。

こんな状況の改善が目標です。Aさんが落ち着かない時間帯(午後3時~4時)について、その様子と行動を観察・記録し、原因を推察しました。周囲をキョロキョロと見回したり、立ち上がって、向かいの席の入居者や職員に何度も声を掛けたりしていました。ときには「どこか行きましょう。」とおっしゃることもありました。

席の移動
食事の席も奥に移動

職員は声を掛けたり、トイレにお連れしたり、座り直してもらったりと、その都度かかわっていましたが、落ち着かれる事がありませんでした。一連の行動を見ていると、“その場に居たくない”“回りの動きが気になる”ということが推察されました。

そこで、次のようなアイデアが出ました。

まず、非常口前に小さなスペースがあり、食席からも離れているので、そちらにくつろげるスペースを作ることにしました。ソファ、観葉植物、絵などの掲示物の設置などの提案があり、実施しました。何もなく、殺風景だったスペースが、大分いい雰囲気になったと思います。やはり、緑があると落ち着きます。

足の低いソファを使用しているので、Aさんは足を伸ばすことが出来、姿勢が楽なようです。リビングの動きも目に入らず、ゆっくり過ごされています。また、他の入居者も利用される事があり、交流の場にもなっています。ご本人の希望で、ここで食事をするときもあります。

くつろぎスペース前 くつろぎスペース後
夕方になると落ち着きのなくなるAさんのため廊下の奥にくつろげるスペースを作った。交流の場にもなった

このことがあって、食堂での席も廊下に面していて周囲がよく見える場所から奥に移動していただきました。以前に比べて、穏やかに過ごされていることが多くなりました。

この経験からユニットケアで「入居者に寄り添うケア」を目指していたにもかかわらず、食席一つをとっても今までの職員の都合で配置していたことを痛感しました。

今後も、もっと入居者の目線から見つめ直し、私たちも「ここで暮らしたい」と思えるような環境にしていきたいと考えています。

マザアス東久留米 課長 矢島美由紀
シルバー新報 2006年(平成18年)6月9日

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