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実践事例集:認知症ケアと施設環境づくり

認知症ケアと施設環境づくり-実践に学ぶ②

PEAP日本版

「環境」の多面性を指摘

認知症高齢者へのケアについては、近年、いろいろな考え方や具体的な取り組みの方法が報告され、現場においても様々な実践が行われています。今回ご紹介する「PEAP日本版3(認知症高齢者への環境支援のための指針)」は、認知症高齢者のケアを「環境」の視点から考えるための指針です。

ここで紹介する6ステップの施設環境づくりでは、まず、現場で何が問題か、どんなケアをしていきたいのか話し合うことから始まりますが、その際、PEAPを基準として考えることを提唱しています。

「環境」というと、建物や設備の性能や利便性ばかりに目が向きがちですが、アメリカでPEAPオリジナル版を開発したワイズマン教授らは、「施設の環境は、物理的環境だけでは成立せず、入居者の能力、施設の制度的・予算的制限、ケア哲学など幅広い要素を含んだものである」と「環境」の多面性を指摘しています。ケアを行ううえで、「環境」を理解することは、非常に重要なことだといえるのです。

PEAP日本版3」は、オリジナル版を翻訳し、日本の文化や現状に合わせて改訂したもので、認知症高齢者の「環境」を整える上で以下のように8つの次元(目標)を設定し、指針として構成されています。

Ⅰ.見当識への支援
環境の物理的・社会的・時間的効果が利用者の見当識を最大限に引き出せるように支援する
Ⅱ.機能的な能力への支援
日常生活動作への援助において、入居者の自立活動を支え、さらに継続できるように支援する
Ⅲ.環境における刺激の質と調整
快適性のための刺激の質の向上と、ストレスを軽減させるための刺激の調整を行う
Ⅳ.安全と安心への支援
安全を脅かすものを最小限に抑え、安心を最大限に高めるように支援する
Ⅴ.生活の継続性への支援
入居者が慣れ親しんだ環境と生活様式を、個人的なものの所有と非施設的な環境づくりのふたつの側面から支援する
Ⅵ.自己選択への支援
物理的環境や施設方針が、個人の好みを尊重したりや自己選択が行えるように支援する
Ⅶ.プライバシーの確保
ひとりになれたり他者と交流できたりと、入居者のニーズに対応して選択できるように支援する
Ⅷ.入居者とのふれあいの促進
他者や外部との社会的接触と相互作用を促進するために、物理的環境や施設方針から支援する

各次元は、次元の目標となる中項目と、具体例を示した小項目から構成されています。(ダウンロード可

PEAPの構成

PEAPの考え方は、施設で取り組む環境の見直しや環境づくりの際に役立ちます。次元間に順番はないので、どの次元から取り組むかは自由ですが、一度にすべてやろうとせずに、皆で意見を出し合い、整理するなかで、優先順位を決めたほうが進めやすいと思います。複数のチームがある場合には、チームごとに取り組む次元を分担してみるのも良いかもしれません。指針に書かれた内容は、そのまま実施するというよりは、8つの次元を柱にしながら、自分達の施設で取り組むとしたらどのような工夫や配慮ができるかを考えてみてください。

はじめはどうしても空間や設備など物理的環境の不具合を解消することに目がいきがちですが、自分達が身近な工夫で出来ることはないかを考えることから始めたほうが良いでしょう。「うまくいかなかったら元に戻せば良い」という割り切りも必要といえます。 また、話し合う中で、8つの次元では説明しづらい新たな環境の次元が出てくるかもしれません。その場合は、無理にどこかの次元に分類せず、新たな次元として記述し、その次元が出てきた理由などを皆で検討してみるとよいかもしれません。

PEAPを使って、「環境」を活かしたケアの実践にぜひ取り組んでみてください。(PEAP日本語版とは?? 参照

日本社会事業大学社会事業研究所・影山優子
シルバー新報 2006年(平成18年)5月19日

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