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実践事例集:認知症ケアと施設環境づくり

シルバー新報掲載より

認知症ケアと施設環境づくり-実践に学ぶ①

6ステップの施設環境づくりプログラム

環境から職員の意識改革

日本社会事業大学と大学周辺の施設が施設環境づくり共同実践研究を行い、環境づくりを通じて職員の意識と認知症ケアの改革に大きな成果をあげた。このシリーズでは、環境づくりの手法と多くの施設にとって参考となる環境づくり実践の紹介を行っていく。


従来の施設環境は、「大規模」「画一的」「それまでの生活とかけ離れた生活」となりがちである。これに対して、認知症高齢者にふさわしい環境の方向として、「小規模」「家庭的」「生活の継続性」の重要性が広く理解されるようになってきた。しかし、従来型施設ではどこから手を付けていいか分からない、またユニットにした施設では環境をどう生かしたらいいか分からないという声が多く聞かれる。

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わいわいとアイディアを出しながら進める

これまで福祉の現場では環境は簡単には変えられないという意識が強く、与えられた環境のなかでケアや入居者の生活が展開してきた。これに対して、施設環境づくりは、環境を生かすことにより、ケアや生活を変えていこうという取り組みである。施設の環境は、建築や設備など「物理的環境」、スタッフの関わり方など「社会的環境」、施設のケア方針など「運営的環境」から構成される。「物理的環境」に着目した施設環境づくりは、取り組みが目に見える利点があり、具体的なところからケアや運営方針など抽象的なところに波及させていくことが出来る。目指すゴールは、環境づくりの取り組みを通じて職員のケアへの意識が変わり、入居者の生活の質が向上することである。

「施設環境づくりプログラム」は、参加メンバーの意見やアイデアを十分に引き出し、共通認識を持って進めることができるように6つのステップと多くのツールから構成される。環境づくり実践の中心はケアスタッフであるが、施設内の様々な職種や管理職の参加は不可欠である。また、環境づくりが単なる見た目の変化に終わらないためには、入居者や家族の意向を反映させることも重要である。

「ステップ1:ケアと環境への理解を高める」では、認知症ケアと環境への理解を深めるために、第2回の連載に登場する「認知症高齢者への環境支援指針」が重要なツールである。「ステップ2:環境課題を抽出する」では、施設環境の短所・長所の把握とそれを共有するために連載の第3回に登場するキャプション評価法が有効である。「ステップ3:計画立案」や「ステップ4:環境をつくる」での取り組みは、ケアスタッフで取り組めるレベル、小工事が必要なレベル、大規模な改造に分けられる。整理整頓や家具・小物・住み方の工夫でも、殺風景な施設環境を生活感ある暖かな雰囲気へと変えることは可能である。「ステップ5:新しい環境を生かす」では、改善した環境をケアプランや生活プランへ取り入れて活用する。「ステップ6:環境づくりを振り返る」では、事後評価やまとめの会などを通じて環境づくりの効果を確認する。このシリーズに登場する施設では、1年間をかけて6ステップの環境づくりを行い、その後も継続的にケアに環境を生かす取り組みが業務に位置づけられている。(環境づくりのツール:表1-1参照)このプログラムを参考に短縮版で取り組むグループホームの例もあり、施設の状況に合わせた工夫も行われている。

日本社会事業大学教授 児玉桂子
シルバー新報 2006年(平成18年)4月28日

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